私のメガネをかけ替えてくれた感動書籍
『職場を幸せにするメガネ』の著者である小林嘉男さんが、自分が今までに読んだ本の中でとくに感動し、影響を与えてくれた本として挙げたのが、次の7冊です。『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形でお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
『戦わない経営』
(浜口隆則/かんき出版)
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著者の浜口隆則さんは、数千という起業家の現実を見てきた「起業の専門家」。
本文でも述べたとおり、私がマネジメントの壁にぶつかり、もがき苦しんでいたときに、どん底から浮上するきっかけを与えてくれた恩書でもあります。
本書は、読む人を温かい気持ちにしてくれます。ビジネスポエムとでも言いたくなるぐらい、著者である浜口さんの経営に対する愛が込められた本になっています。あっという間に読めますが、書かれていることは本質的であり、自身のマネジメントに照らし合わせながら、じっくり味わっていただきたい一冊です。
『成功するのに目標はいらない!
――人生を劇的に変える「自分軸」の見つけ方』
(平本相武/こう書房)
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著者の平本相武(あきお)さんは、アメリカの大学院でアドラー心理学を学んだ日本を代表するアドラー派のコーチ、カウンセラーで、私のコーチングの師匠でもあります。
本書の「人は、ビジョンと価値観に基づいた『自分軸』を大切にして生きるべきである」「誰もが『人生の主人公』として生きることができる」というメッセージが、私のメガネをかけ替えてくれました。
また、ビジョン志向の強かった私が「価値観も非常に大切」ということを学んだ本でした。
「ビジョン型」と「価値観型」の傾向を知るチェックテストは、私たちに多くの気づきを与えてくれます。
『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか
――人間の出会いが生み出す「最高のアート」』
(田坂広志/PHP研究所)
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著者は、シンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志さん。田坂広志さんは、私のメンター的存在でもあります。マネジメントの仕事に就く前から、キャリアを形成していく上で多大な影響を受けた著者でもあります。ということもあって、どの本を推奨するか迷いましたが、マネージャー向けに最もふさわしいと思う一冊を選びました。
田坂さんは、マネジメントの道は、「重荷」であると言います。なぜなら部下の人生に責任を持つことになるから。にもかかわらず、なぜ私たちは、マネジメントの道を歩むのでしょうか? それは、一人の人間として成長できるからだと田坂さんは主張します。では、人間としての成長とは何なのか、詳しくは本書をお読みください。
『メンタリング・マネジメント――共感と信頼の人材育成術』
(福島正伸/ダイヤモンド社)
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著者の福島正伸さんは、ドリプラ(ドリームプラン・プレゼンテーション)の主催者であり、「夢しか実現しない」をモットーに掲げる人気経営コンサルタント。
本書も私がマネジメントの壁にぶつかり苦しかったときに、光を与えてくれた恩書の一冊です。
部下は上司の鏡。部下を見れば上司がどんなマネジメントをしているかわかると言います。
当時自分のマネジメントスタイルについて悩んでいた私は、本書からマネージャーとして大切にすべき3つのことを学びました。その3つとは「見本」「信頼」「支援」。詳しくは本書で確認ください。
『上司の心理学――部下の心をつかみ、能力を高める』
(衛藤信之/ダイヤモンド社)
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著者の衛藤信之さんは、日本メンタルヘルス協会代表を務める心理カウンセラー。多数の企業で顧問を務めるなどマネジメントにも精通した人気心理カウンセラーです。
本書は、心理学の視点から、マネジメントに求められるリーダーシップについて丁寧に解説してくれています。もはや部下は、理屈や権威では動かない。あんな上司になりたいと尊敬できる上司、あの人のためならと思える上司の魅力で動くのだと。本書もまた、鬼、冷徹人間と言われていた私のメガネをかけ替えるきっかけになった本の一つです。
『新訂 いい会社をつくりましょう』
(塚越寛/文屋・サンクチュアリ出版)
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「かんてんぱぱ」ブランドで知られる伊那食品工業株式会社代表取締役会長・塚越寛氏の経営理念を、わかりやすくまとめた一冊です。
会社の目的は、社員の幸福な理想郷づくりと言い切る塚越さん。
『戦わない経営』の著者、浜口さんの「社長は幸せの専門家」と相通ずるものがあります。同じようなタイミングで、このような素晴らしい経営理念に出合えたことが、私の今のマネジメントにつながっているのだと思います。本書のタイトルは、「いい会社をつくりましょう〜たくましく そして やさしく〜」という伊那食品工業の社是でもあります。いい会社、そして、幸せな職場をつくりましょう。それが私の願いでもあります。
『コーチングのプロが教える 決断の法則「これをやる!」』
(鈴木義幸/講談社)
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著者は、株式会社コーチ・エィ取締役社長の鈴木義幸さん。日本にコーチングを持ち込んだとされるコーチ・トゥエンティワンの設立に参画され、コーチングの普及に貢献されてこられた方です。
私とコーチングの出合いも、鈴木さんの著書との出合いがスタートでした。本書は、タイトルのとおり、「決めること」の重要性を説いた本です。実は、私が本書を初めて読んだのは、部下から鬼、冷徹と思われ始めた頃なのです。
その頃の私は、「部下を鍛える」と決めていたのですね。決めることはパワフルだけれども、かけるメガネを間違えてしまうとまったく違う結果を招いてしまうこともあります。マネジメントの壁にぶつかり本書を再読し、今度は、「部下を幸せにする」と決めたのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
一人ひとりが自分らしく仕事をし、お互いに笑顔で協力し合い、個人としてもチームとしても素晴らしい結果を出し続ける――――そんな職場が、日本中でさらに増えることを願っています。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
※冒頭の写真は下記からお借りしました。いつもありがとうございます!
『職場を幸せにするメガネ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』
(小林嘉男著)
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「人に優しく、仕事に厳しく」の経理部でありたい
『職場を幸せにするメガネ』の著者である、小林嘉男さんの職場では、「人に優しく、仕事に厳しく」の姿勢でメンバーが仕事に臨んでいるそうです。その具体的なようすを、『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形でお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
私たちの部署では、部会などを通じて、こんなスローガンを共有しています。
「経理部品質」
「経理部プライド」
ピンとこられた方、そのとおりです。
テレビドラマにもなった池井戸潤さんの『下町ロケット』に登場する佃製作所が掲げた「佃品質」「佃プライド」をヒントに作成したスローガンです。
私たちは、自分たちの成果物にプライドとこだわりを持って仕事をしています。
楽しい雰囲気は大切ですが、楽しむことが目的ではありません。経理部として付加価値を発揮し、関係者すべてに貢献していくことが目的です。
だからこそ、成果物に問題があったとき、それに関わったスタッフのことは一切責めません。なぜなら、責める必要などまったくないからです。関わった当事者がいちばん悔しいからです。
そして、当事者を責める代わりに、私は「自分たちの品質レベルがこの程度でいいのか?」「自分たちのプライドはこんなものなのか?」を皆に問いかけるようにしています。
「人に優しく、仕事に厳しく」
これが、経理部スタイルなのです。
こんなふうに私たちの経理部は、部員一人ひとりが自分らしく仕事をし、お互いに笑顔で協力し合い、個人としてもチームとしても素晴らしい結果を出し続けています。
実は、この原稿を書いている最中にも、私たちの経理部は厳しい状況に立たされてしまいました。長年私と共に職場をつくってきたチームリーダー2人と主力メンバーの1人が海外に赴任してしまったからです。野球に例えれば、クリーンナップを打つ3番、4番、5番が一気に抜けてしまった状態です。
それでも、私たちは日々行われる試合に勝たなければなりません。
そのような状況の下、メンバー一人ひとりが自主的に精力的に今まで以上に頑張ってくれています。
なかでも人一倍頑張っている若手スタッフがいます。
ある日の個別面談で、私は彼に感謝の言葉を告げました。そして、彼に質問をしました。
「すっごく頑張ってくれて嬉しいけど、どうしてこんなに頑張れるの?」
「頑張れる源は何?」
彼は照れながらもしっかりとした口調で次のように答えてくれました。
「自分は、経理部が大好きなんです。経理部の雰囲気も一緒に働く仲間も。その経理部をつくってくれているのが小林さんじゃないですか。この雰囲気をつくってくれているのも小林さんじゃないですか。だから、小林さんに恩返しがしたいんです。大好きな経理部に貢献したいんです」
私の目は真っ赤になり、「ありがとう」「一緒に頑張ろう」と言うのが精いっぱいでした。
「これが組織の成功循環サイクルのグッドサイクルが回っている状態、メンバー一人ひとりが共同体感覚を持てている状態なんだ」――私はあらためて実感しました。
新生経理部はまだまだ道半ばですが、さらに素晴らしい職場になると確信しています。
~以上、本文からの抜粋です。~
一人ひとりが自分らしく仕事をし、お互いに笑顔で協力し合い、個人としてもチームとしても素晴らしい結果を出し続ける――――そんな職場が、日本中でさらに増えることを願っています。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
『職場を幸せにするメガネ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』
(小林嘉男著)
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職場の結束力を高める「4つのキーワード」とは?
「幸せ職場」を創る上で特に重要なキーワードが4つあると、『職場を幸せにするメガネ』の著者である小林さんは言います。
それはなんでしょうか……? 今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形でお話しします。
~以下、本文より抜粋です。~
キーワード1/「感謝」
私たちは、お互いに支え合いながら生きています。そのことに気づき、感謝できる、謙虚な人でありたいと思っています。
リーダーになると、周りの人から持ち上げられる機会が多くなります。どうしても自分が偉くなったと勘違いしがちです。その結果、いつの間にか上下関係が出来上がります。けれども、つくりたいのは「横の関係」なのです。
考えてみてください。一番たくさんの人に支えられているのは誰でしょうか?
ほかならぬ上司であるあなた自身です。部下が10人いれば10人の部下に支えられて職場が成り立っているのです。
そのことに感謝できる、謙虚な人でありたいですね。
上司が日々の部下の頑張りに対し、感謝の気持ちを伝える――。
これは、最もシンプルで、最もパワフルな、部下の心のコップを水でいっぱいに満たす行為なのです。
上司から感謝された部下は、自分が職場や上司に貢献できた「貢献感」を味わうことができ、そんな自分に自信が持てるようになります。そして、感謝を伝えてくれた上司をさらに信頼できるようになるわけです。
また、上司から感謝された部下は、職場の仲間にも感謝できるようになっていきます。自分自身が感謝されることの素晴らしさを、身をもって体験しているからです。
上司から部下への感謝が、こうやって同僚同士の感謝へと広がっていきます。常にお互いに感謝の気持ちを持って接する職場が、幸せでないはずがありませんよね?
感謝から始まるマネジメント、これが幸せな職場への第一歩なのです。
キーワード2/「寛容」
この世に完全な人など存在しません。どんな人でも、優れたところがあれば欠けているところもあります。
その不完全さを受け入れたいのです。
「寛容」とは、不完全さを受け入れる勇気です。
人の不完全さを受け入れるには、まず自分の不完全さを受け入れることが必要です。リーダーに昇格する人の多くは、自分に厳しくストイックな面があると思います。ストイックな面ももちろん大切ですが、心の余裕がほしいのです。心に余裕ができた分だけ、人に優しくなれます。
鬼上司時代の自分には、このキーワードが欠けていました。毎朝4時に起きて、5時に出社して、ビジネス書を読んでから、自分の仕事に取りかかる……毎日4時間睡眠で働き続けました。それでも「自分はまだまだ甘い」と思っていたのです。
その厳しさは自分だけでなく、部下にも向かいました。それが人を成長させるいちばん良い方法だと思っていたからです。そして、職場からは笑顔が消えていったのです。
キーワード3/「楽しむ」
仕事や働くことを楽しもうとするから楽しくなる。笑顔でやるから仕事が楽しくなる――「リーダーは幸せの専門家」というメガネをかけて、私は初めて気づきました。
仕事が楽しく職場が楽しいと、もっともっと頑張ろうという気持ちになれる。
楽しいから気持ちに余裕ができて、自分にも周りの人にも優しくなれる。
日々、生きること、働くことを楽しむ――。それが幸せな職場につながっていくのだと気づいたのです。
ですから、私たちの経理部は楽しい空気が大好きです。職場に自分の好きなものを持ち込むことを大歓迎しています。アニメキャラクターのぬいぐるみやフィギュア、家族、ペットの写真、けんだま、将棋、オセロなどのゲーム、観葉植物、メンバーそれぞれのデスクが好きなものであふれています。
また、楽しいイベントも大好きです。野球、フットサル、サイクリング、バーベキューなど、休日やアフターファイブも仲間同士で楽しむ、そんな楽しい職場です。
このような話をさせていただくと、顔をしかめる方がいらっしゃいます。
「サークルじゃないんだから。会社は仕事をするところですよ」と。
おっしゃるとおりです。
仕事ですから、成果が求められるのは当然です。
だからこそ、私はあらためて言います。
その成果が挙がるのは、組織の成功循環サイクルのグッドサイクルが回っているときなのです。しかめっ面でギスギスした職場ではなく、みんなが笑顔で楽しく働く職場なのです。
キーワード4/「Yes , and」
そして最後は、「Yes, and」です。
鬼上司時代に私がやっていたこと。それは、部下を鍛えるためにとことんダメ出しをすることでした。いかに部下のできていないところを探すかに力を注いでいたのです。
ですから、私の第一声は、いつも「No(違うでしょ)」だったのです。部下が何を言っても、「違うでしょ。そこはAじゃなくてBでしょ」。
常に否定される部下は、とてもつらかったに違いありません。
にもかかわらず、ミーティングのたびに「もっと意見を言いなさい」「自分の意見を持ちなさい」と言い続けていたのです。自らが、部下が発言しない原因になっているとも気づかずに……。
これがバッドサイクルを引き起こす最大の要因になっていたと思います。
つくりたいのは、否定し合う文化ではなく、認め合う文化です。
その土壌があるからこそ、グッドサイクルが回り続けることができるのです。
ですから、第一声は、「Yes(そうなんですね)」で始まりたいのです。
ここで陥りやすいのが、せっかく「Yes」で受けたにもかかわらず、「But(でもね)」で結局否定しまうことです。
自分の意見を主張したいがために、「But(でもね)」を使ってしまうのです。
そこで身につけたいのは、「Yes(そうなんですね)」で受けて、「And(そして)」で展開する「Yes, and」の習慣です。
習慣と書いたとおり、考えて使うのではなく、習慣として無意識に口に出るようになるまで徹底させたいものです。
「Yes, but」の事例
「Aがいいと思うのですね。でもね、私はBのほうがいいと思うのですが」
「Yes, and」の事例
「Aがいいと思うのですね。そして、私はBの考え方も面白いと思うのですが、いかがでしょうか」
「そして」という表現は日常的には、しっくりこないこともあるので、「さらに」「加えて」「それと」など、肯定的につなげる語彙を増やしておくとよいでしょう。
「Yes, and」を使いながら認め合う文化を醸成していくためには、それにふさわしいメガネがあります。
○か×か?
勝ちか負けか?
黒か白か?
そんな二元論的なメガネをかけているとしたら、そのメガネをかけ替えましょう。
二元論的なメガネをかけていると、どうしても自分と違う意見を否定したくなってしまいます。
この二元論的なメガネから、共に持てるものを出し合って、目指すべきゴールに向かって進んでいくというメガネにかけ替えましょう。
誰の考えが正しいかを競う「競争」ではなく、共に創る「共創」の精神で臨みたいのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
2018年平昌オリンピックの女子カーリングチームの口グセ「そだねー」が話題になりましたが、「Yes, and」の習慣は、まさにそれに通じるものがありますね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
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「相互理解の場」をつくる、職場での仕組みづくり
信頼関係を構築するには相互理解の推進が必要です。そのためにはコミュニケーションを取る機会を仕組み化することが肝心です。上司がいくら「コミュニケーションは大切だ」と声高に叫び続けても、状況は変わらないからです。
そこで今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、相互理解をつくる仕組みについてお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
経理部で設けている相互理解の場は、上の表のとおりです。
この中からいくつかピックアップし、特徴についてご説明します。
《相互理解の場①/朝礼》
朝礼は、私からの挨拶で始まります。単なる報告事項ではなく、その時その時の状況に合わせて部員にメッセージを送るようにしています。せっかく部員全員が集まる貴重な場を、単なる報告で終わらせたくないからです。
その後、部員同士でペアを組み、経理部スタイルの20の言葉をテーマにコミュニケーションを図ります。最後は、指名された部員が音頭をとって円陣を組み、それぞれのチームの朝礼へと分かれます。
経理部は精算業務なども行っているため、銀行の窓口のようにカウンターがあり、カウンター越しに経理部の中が見えるようになっています。
経理部の前を通りかかり、カウンター越しに経理部の円陣の風景を見た社員は、たいてい驚いて二度見していきます。社内でも「経理部の朝礼は変わっている」と評判になっているのです。
毎朝全員で集まって、笑顔でスタートする。
これが経理部の朝の儀式です。
《相互理解の場②/チームリーダーとの週次面談》
経理部内のチーム運営は、完全にチームリーダーに任せています。その代わり、チームリーダー一人ひとりと週ごとに面談し、運営面の悩みや課題解決をサポートしています。チームリーダーは、裁量が与えられているので自分の思うようにチーム運営ができる分、責任も感じていることと思います。
私自身、初めてリーダーになったときに、上司に信頼していただき、自分の裁量でチーム運営ができたことが自分の成長に大きくつながったと思っています。鬼、冷徹人間などと呼ばれる結果になってはしまいましたが、自分で考えて運営してきたからこそ、間違いに気づいたとき、どん底から自分で這い上がってこられたのだと思っています。
部下を成長させるには自由に自分で考えて動ける環境を用意することが重要だと、自らの体験から学んだのです。
《相互理解の場③/部下全員との個別面談》
信頼関係を構築し「関係の質」を強化していく上でベースになるのが、部下一人ひとりとのコミュニケーションだと思っています。
ですから、私にとっての最優先事項は部下との個別面談です。毎月のスケジュールは、まず部下との個別面談の枠から押さえていきます。
この個別面談の主役は、部下です。そのため、私は部下全員に、「私とのこの時間は好きなように使ってください」と伝えています。部下が話したいことを話していい時間ということです。部下によって話す内容はまちまちです。これも部下の個性だと思っています。
この「部下との時間」をどれくらい有効な時間にできるか?――これが上司の手腕だと思っています。
ですから、私は私費を投じてコーチングなどのコミュニケーション学を学び続けてきました。正直申し上げて、私が数年で経理部を社内一働きがいのある職場に生まれ変わらせることができたのも、コミュニケーション能力によるところが大きいと思っています。
上司が身につけるべきコミュニケーション能力については、正直たくさんあります。ここでは、特に個別面談において「これだけは押さえておきたい」というポイントに絞ってお伝えしたいと思います。
「主役は部下」を徹底する
↓部下との個別面談は部下の時間です。部下が今、興味関心を持っていることに、関心を寄せましょう。
上司は聞くことに徹する
↓いつの間にか上司が話し込んでいる……そんなことはないでしょうか? 何度も繰り返しますが、部下の興味関心に関心を寄せる時間です。上司自身が話し込まないと心に決めて臨みましょう。
余計なアドバイスはしない
↓ついついアドバイスをしたくなりますが、極力部下に考える機会を与えましょう。部下が考えても答えにたどり着かない、これ以上考えさせてもしょうがないところまで我慢しましょう。それが部下が成長する近道です。
説教をしない
↓部下のことを考え、良かれと思ってつい説教してしまうことがあります。これも部下の成長を妨げたり、部下の心が上司から離れる原因にもなります。
アドラー心理学に「課題の分離」という考え方があります。これは誰の課題なのかということです。例えば、部下の成長を考えたとき、部下に「もっと自己研鑽すべきだ」とアドバイスしたくなります。しかし、自己研鑽するかしないかは部下の課題であって、上司の課題ではないのです。これは、人の家に土足で踏み入れるのに近い行為なのです。
では、上司はどうすればよいのでしょうか?
何もせず指をくわえて部下が動くのを待つしかないのでしょうか?
そんなことはありません。
まず上司が率先して模範を示す姿、自己研鑽する姿を背中で見せることです。
みなさんも記憶に残っているはずです。「勉強しなさい」と親から言われることがどれだけうるさいことだったか……。
鬼、冷徹人間と言われていた頃の私は、これをやってしまったのです。ダメ出しをするだけでなく、「もっと勉強すべきだ」と毎回のように説教していたのです。どれほど嫌な上司だったか、当時を思い出すと自分でもぞっとします。
《相互理解の場④/部会》
皆さんの職場は、部員全員が一堂に会する場をお持ちでしょうか? 職場の規模にもよりますが、ある程度の規模になると全員が集まる機会はなかなかつくれず、とても貴重な時間になってきます。
皆さんは、この貴重な時間をどのように使っているでしょうか?
単なる報告事項の伝達だけで終わらせていないでしょうか?
全員が集う機会だからこそ、上司である自分の想いを伝えたり、部下の頑張りにねぎらいの言葉をかけたり、ときに叱咤激励をしたりと、直接部下に働きかける時間として活用したいものです。
私は、毎月の部会を利用して、毎回何かしら部員全員にメッセージを投げかけています。毎回セミナーを開催しているようなイメージです。セミナーとはいかないまでも、何かしら上司としての想いや、なぜこれらのことに取り組むのか「Why?」の部分を大切にして語り続けてほしいのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
毎朝、毎週、毎月……といったルールを設け、部下とのコミュニケーションを最優先事項として時間を割くことが大事なのですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
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「バリューズ=経理部スタイル」の浸透活動
小林さんが「幸せ職場」を作るための具体的な仕組みとして最も工夫をしているのが、バリューズ(「経理部スタイル」と名づけているそうです)の浸透です。
そこで今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、その仕組みについてお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
経理部スタイルは、「感謝」「寛容」「楽しむ」「Yes, and」「報連相」「スピーディー」「正確」など、全部で20の言葉で構成されています。この言葉は、「自分たちが大事にしたい価値観って何だろう?」とみんなで考え、みんなで出し合い、みんなで選んだものです。
20の言葉は、私たちにとって大切なものばかりです。
そして、私は「一日の中で特に大切にしたい言葉を自分自身で毎朝一つ選び、その言葉を胸に仕事を始める」という仕組みをつくったのです。
例えば、「今日は一年でいちばん忙しい日だけれど、だからこそ『楽しむ』という価値を忘れずにいよう」と思った人は、「楽しむ」という言葉を選ぶわけです。
「バリューズ=経理部スタイル」の浸透活動は、①〜⑥のような仕組みで行っています。
①20の言葉は、プラスチックのネームケースに入る大きさでラミネート加工し、ネームケースに差し込んで身に着けられる状態で保管しています。
②そして、毎朝一人ひとりが、その日大切にしたい言葉を選びネームプレートに差し込みます。
これだけでは終わりません。
③毎朝の朝礼時間に部員同士でペアを組み、自分の選んだ言葉について対話をする時間を設けています。
これによって、バリューズの浸透と部員同士のコミュニケーションの活性化の両方を推進することができるからです。
バリューズの浸透活動は、これだけにとどまりません。
④毎月チームごとに最も「経理部スタイル」を体現していたメンバーを「ベスト・オブ・スタイル」として選出し、部会で発表しています。
チーム全員のなかから選出されるわけですから、「幸福の3条件」の「自分はチームに役に立っている実感(他者貢献)」と「自分を選んでくれた同僚に対する感謝(他者信頼)」が高まり、「そんな自分にOKが出せる気持ち(自己受容)」も上昇していくのです。
さらに続きがあります。
⑤各チームから「ベスト・オブ・スタイル」に選出されたメンバーと私で、「BOSランチ」(「ベスト・オブ・スタイル」を略したBOSと「上司」のBOSSとの掛け言葉)と称してランチを食べることにしています。
選出されたメンバーは、もちろん招待です。このランチタイムも、職場の関係の質を上げていくのに効果を発揮しています。
そして、毎月11日は私たちにとって特別な日に定めています。
⑥経理部では、毎月11日を「感謝の日」に制定しています。これは、2011年3月11日、東日本大震災の翌月から始めたことです。毎月11日は、全員が20の言葉の中から「感謝」を選んで身に着けます。「こうして全員無事に集い、仕事ができることに感謝をしよう。自分の身の回りのことに感謝する気持ちを忘れないようにしよう」という想いを込めて始めた仕組みです。
感謝の日の仕組みも、職場の結束力を高める原動力となっています。
~以上、本文からの抜粋です。~
いかがだったでしょうか? ①~⑥のような具体的かつ継続的な仕組みを通じて、「幸せ職場」を築き、維持しているそうです。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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職場で共有したい価値を浸透させる仕組みづくり
どんなに素晴らしいミッション、ビジョン、バリューズを作っても、日常の活動に反映されていかなければ意味がありません。どんなに上司が声高にコミュニケーションの重要性を訴えても、実際に上司と部下、部下同士でコミュニケーションが取れなければ何も変わりません。つくったものに命を吹き込む必要があります。
そこで今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、その方法についてお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
実際に私の職場で行われていることを紹介しながら、仕組み化について考えていきます。
私が部長を務める経理部のミッション、ビジョン、バリューズ、行動指針は次のとおりです。
【ミッション】
数知を探求し、すべての関わりある人を最高の結果に導く
【ビジョン】
※チームごと(経理部全体のビジョンはあえて作らず、チームごとに3年後のビジ
ョンとそれを実現するためのアクションプランを作成)
【バリューズ】
「感謝」「寛容」「楽しむ」「Yes, and」「報連相」「スピーディー」「正確」など20の言葉で構成
【行動指針】
頂点を目指せ!
プロのこだわりを持とう!
ただ闇雲に働くな、スマートに行こう!
ミッション、ビジョン、行動指針については、さらにチーム単位、個人単位に具体的に落とし込み、展開しています。
・自分たちのミッションは何なのか?
・3年後のビジョンは?
・それを達成するために何をするか?
・プロとして自分は何にこだわるのか?
・業務効率化のターゲットは?
これらを、チーム単位、個人単位で作成していきます。
そして、チームごとの取り組みについては、四半期ごとに部会で活動状況報告を行い、個人の取り組みについては、チームミーティングで毎月活動状況を共有しています。
ここで大切なのは、チーム単位でも個人単位でも、それぞれ自分たちで目標やアクションを決めるということ。つまり、「自分ごと」にすることです。そして、その進捗確認は、仕組みとしてフォローできるようにしておきます。
それぞれの想いや意志を反映させていくところと、人の意志に頼るのではなく仕組みで回していくところの棲み分けを意識的に行うことです。
そして、私が仕組みとして最も工夫をしているのが、バリューズの浸透です。
私たちは、バリューズではなく、「経理部スタイル」と名づけています。
「経理部スタイル」の浸透のさせ方は、次回の投稿でお話しします。
~以上、本文からの抜粋です。~
メンバー全員が、ミッション、ビジョン、バリューズ「自分ごと」と捉えられるどうか……ここは非常に重要な点ですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
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部下へのフィードバックは「YOUメッセージ+Iメッセージ」で!
お互いの存在を認め合い、「自分はここに存在するだけで、誰かに何かを与えることができる存在なんだ」と一人ひとりが感じ合える場こそが、最高の「幸せ職場」です。今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、フィードバックの伝え方についてもお伝えしたいと思います。
~以下、本文より抜粋です。~
ポイントは「I(私)メッセージ」を盛り込むということです。
例えば、部下がある大口の顧客から受注を獲得したとします。上司であるあなたは、どんな言葉をかけるでしょうか?
Aパターン「こんな大口から受注を取るなんてすごいじゃないか!」
Bパターン「僕も自分のことのように嬉しいよ」
どちらも好意的な表現なので、部下としては言われて悪い気はしないかもしれません。けれども、2つの表現には、実は大きな違いがあるのです。
Aパターンは、「あなたはすごい」という、上司から見た評価・判断を伝えています。
それに対してBパターンは、「自分のことのように嬉しい」という、上司の中で生まれた感情を伝えているのです。
コミュニケーション学では、Aパターンを「YOU(あなた)メッセージ」、Bパターンを「I(私)メッセージ」と呼んでいます。
「あなたは○○だ」というYOUメッセージは、客観的感想を伝えるのに向いています。けれども、言われた側からすると、なんだか上から言われているようで気分悪く感じたり、素直に受け取れないことがあります。
それに対して「私は○○と感じた」というIメッセージは、伝え手側の内側で起こったことを主観的に伝えているので、受け手側もあまり否定的にならず、素直に受け取ることができます。
「痛みに耐えてよく頑張った! 感動した! おめでとう!」
これは怪我をおして優勝した貴乃花に、小泉首相が発した名言です。
これをYOUメッセージ、Iメッセージの視点で見てみましょう。
「痛みに耐えてよく頑張った!」は、YOUメッセージ。
「感動した! おめでとう!」は、Iメッセージです。
「あなたは痛みに耐えてよく頑張った。だから、私は感動した。感謝します」と、前半のYOUメッセージ部分が、後半のIメッセージ部分の理由や動機となっているのですね。
このような「YOUメッセージ+Iメッセージ」の組み合わせは、受け手側の納得感が強いものになるので、ぜひ取り入れていきたいところです。
例えば、先ほどのBパターンを、
「君が今回の受注を獲得するためにどれだけ努力してきたか見ていたから、僕も自分のことのように嬉しいよ」
という伝え方に変えてみます。
前半のYOUメッセージがあることで、日頃からしっかり見てくれていることも伝わり、それがまた聞き手の喜びを生むのではないでしょうか。
ちなみに小泉首相の名言を補足すると、「感動した!」は、小泉首相のIメッセージでもあり、相撲を観戦していた人たち、つまり「WE(私たち)」の気持ちを代弁する「WEメッセージ」でもあったので、なおさら見ている人たちの心が動いたのでしょう。
もしも「痛みに耐えてよく頑張った! あなたは偉い!」と、すべてYOUメッセージで構成されていたら、どうなっていたでしょうか? 「小泉さん、あんたはどれだけ偉いんだよ。何様だよ」という感情で、受け取られていたかもしれませんね。
~以上、本文からの抜粋です。~
「YOUメッセージ+Iメッセージ」の組み合わせは、受け手側の納得感が強いものになる……これはぜひ覚えておきたいですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
※冒頭の写真は下記からお借りしました。いつもありがとうございます!
『職場を幸せにするメガネ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』
(小林嘉男著)
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毎月11日を「感謝の日」に制定し、職場の仲間の存在を感謝する
お互いの存在を認め合い、「自分はここに存在するだけで、誰かに何かを与えることができる存在なんだ」と一人ひとりが感じ合える場こそが、最高の「幸せ職場」です。今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、職場で導入できる仕組みについて考えていきたいと思います。
~以下、本文より抜粋です。~
2011年3月11日、みなさんはどこで何をしていたでしょうか?
この日は、忘れもしない東日本大震災が起きた日です。
私は東京のオフィスの自席で仕事をしていました。思い出すと今でも恐怖で心臓がバクバクします。オフィスの壁一面に設置された可動式のキャビネットが、地震の揺れでガシャンガシャンと音を立てながら左右に移動し続けていたのです。このまま建物が崩れるのではないか……、本気でそう思いました。
私たちは普段、会社で仕事をしていることも、家族と一緒にいることも、生きていることも、当然のことのように思っています。けれども、あの日を境に、生きていることは当然ではなく、こうやって何事もなく全員が集まって仕事ができることは有り難いことなんだと思えるようになったのです。
そうなのです。
存在してくれているだけで、有り難いことなのです。
その「存在してくれてありがとう」という気持ちを、部下の皆さんにも伝えていきたいですね。
毎朝の「おはよう」の挨拶のひと言に、「今日も元気に出社してくれてありがとう」という気持ちを込めたいのです。
部下の存在そのものに感謝の気持ちを伝える――これこそが究極の勇気づけだと私は思います。
お互いの存在を認め合い、「自分はここに存在するだけで、誰かに何かを与えることができる存在なんだ」と一人ひとりが感じ合える場こそが、最高の「幸せ職場」なのです。
私が仕組みとして最も工夫をしているのが、バリューズの浸透です。私たちは、バリューズではなく、「経理部スタイル」と名づけています。
経理部スタイルは、「感謝」「寛容」「楽しむ」「Yes, and」「報連相」「スピーディー」「正確」など、全部で20の言葉で構成されています。この言葉は、「自分たちが大事にしたい価値観って何だろう?」とみんなで考え、みんなで出し合い、みんなで選んだものです。
20の言葉は、私たちにとって大切なものばかりです。
そして、私は「一日の中で特に大切にしたい言葉を自分自身で毎朝一つ選び、その言葉を胸に仕事を始める」という仕組みをつくったのです。
例えば、「今日は一年でいちばん忙しい日だけれど、だからこそ『楽しむ』という価値を忘れずにいよう」と思った人は、「楽しむ」という言葉を選ぶわけです。
そして、毎月11日は私たちにとって特別な日に定めています。
経理部では、毎月11日を「感謝の日」に制定しています。これは、2011年3月11日、東日本大震災の翌月から始めたことです。
毎月11日は、全員が20の言葉の中から「感謝」を選んで身に着けます。「こうして全員無事に集い、仕事ができることに感謝をしよう。自分の身の回りのことに感謝する気持ちを忘れないようにしよう」という想いを込めて始めた仕組みです。
感謝の日の仕組みも、職場の結束力を高める原動力となっています。
~以上、本文からの抜粋です。~
「有り難い」という言葉の意味をあらためてかみしめ、「感謝」の気持ちを伝え合いながら、毎日を積み重ねていきたいですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
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相手を「勇気づける」フィードバックをする
『職場を幸せにするメガネ』の著者、小林嘉男さんがチームリーダーと週次面接を行うようす
上司が部下に対して行いたいフィードバック、それは「褒める」でも「叱る」でもなく「勇気づけ」のフィードバックです。
今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、上司から部下へのフィードバックについて考えていきたいと思います。
~以下、本文より抜粋です。~
勇気づけとは、共同体感覚が強まる関わりのことであり、グッドサイクルを形成していく行為です。
では、実際に職場でどのように勇気づけしていけばよいのか考えていきましょう。
まず始めに大切なのは、部下の頑張りをしっかり見るということです。
よく「うちの部下は売上もあげられない人間ばかりですよ。頑張っているところを探すっていったって、そりゃ無理ですよ」といった声を聞きます。
この上司は、部下の何を見ているのでしょうか?
売上、つまり「成果・結果」を見ているわけです。成果を挙げることはもちろん必要なのですが、成果・結果というのはいろいろな要因が重なり合って出てくるものなので、必ずしも部下本人がコントロールできることばかりではありません。
常に結果を出すことを求めたり求められたりする関係は長続きせず、職場の幸福度は下がってしまいます。
では、成果・結果を見るのではないのだとしたら、何を見ればよいのでしょうか?
それは「プロセス」です。
ダニエル・キム教授の提唱した、組織の成功循環サイクルの図を覚えているでしょうか?
「プロセス」とは、あの図における「関係の質」「思考の質」「行動の質」の部分を指していると考えてください。
なぜなら、「結果の質」は本人でコントロールしにくい(売上が上がるかどうかは顧客の事情によるところが大きい)けれども、「関係の質」「思考の質」「行動の質」は本人でコントロールしやすい(いいアイデアを考えたり、訪問数を増やしたりは自分次第でできる)からです。
「関係」「思考」「行動」の質が向上すれば、グッドサイクルは必ず加速されます。それに伴って「結果の質」も、たとえ時間差があったとしても、必ず向上するのです。
『職場を幸せにするメガネ』P.217より引用
ですから、結果が良かったときも、伴わなかったときも、常に「関係」「思考」「行動」のプロセスでの取り組みに注目したいのです。そして、以前よりも成長・進化したところに目を向け、フィードバックしていきましょう。
数字など目に見える「結果・成果」ではなく、目に見えにくい「プロセス」における部下の成長・進化をフィードバックする――そのためには、常に部下のことを見ている必要があります。
仲間の成長・進化を、決して見逃さない。
そんなメガネを、私たちリーダーはかけ続けていたいですね。
~以上、本文からの抜粋です。~
目に見えにくい「プロセス」をしっかりと見て、部下の成長・進化した点をフィードバックする――決して簡単なことではありません。だからこそ、「自分は幸せ職場を創るリーダーとなるんだ」と決める「覚悟」も求められるでしょう。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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上司と部下は、上下関係でなく「横の関係」でつながっていることが大切
部下が職場で「自分はチームに役に立つ存在なんだ」という思いを高めていくためには、適切なフィードバックが必要です。
そこで、今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、上司から部下へのフィードバックについて考えていきたいと思います。
~以下、本文より抜粋です。~
上司から部下にフィードバックする――そう聞くと、多くの方が「褒める」を連想されると思います。
「褒めて伸ばす」という表現があるとおり、一般的には「褒める」ことは良いことだと認識されていると思いますが、アドラー心理学では必ずしも良いとはされていないのです。
ここで、「うん? 『褒める』を良しとしない、ってどういうこと?」と思われた方もいらっしゃることでしょう。
「勇気づけ』」の回で「褒めても叱っても、相手の共同体感覚が強まる関わりであれば、それは勇気づけとなる」と書きました。
「『褒める』という行為は良くない」とまでは、あえて書きませんでした。
ここで、しっかりと説明したかったからです。
では、なぜ「褒める」という行為を、アドラー心理学では良しとしないのでしょうか?
それは、アドラー心理学では「すべての人間関係は『横の関係』であるのがふさわしい」と考えているからです。
上下関係においては、上は権力で下を動かそうという力が働きます。
下は、それに従っていればいいという姿勢になりがちです。
これは、アドラーが言う「私たちは人生の主人公なんだ」という考え方と相反する姿勢です。
親と子、教師と生徒、社長と新入社員……単に役割の違いがあるだけで、横の位置でつながっている――私たちは、一人ひとりが人生の主人公として、お互いが対等な「横の関係」でありたいのです。
この「横の関係」という言葉を踏まえて「褒める」を見直してみましょう。
すると、上から下へ評価する、上下関係を象徴する行為であることがわかります。
なぜなら、上司が部下に対して「○○さん、頑張りましたね」とは言いますが、社員が社長に「社長、頑張りましたね」とは言わないからです。
ですから、アドラーは褒めることを良しとしないのです。
ただ、なかには、
「関係に上下がないだって? 社長と新入りは対等で、単なる役割の違いだって? そんなの冗談じゃない。上にいくために今まで下の立場でさんざん我慢してきたんじゃないか!」
と憤慨される方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今までのことを思えば、その気持ちもよくわかります。
「できる仕事のレベル感がまったく違うだろう」と納得がいかない気持ちもわかります。
たとえその気持ちがあったとしても、その負の連鎖をあなたのところで断ち切っていただきたいのです。
上司と部下の関係が「上下関係」に見えるメガネから、「横の関係」に見えるメガネにかけ替える――。
これが職場の「関係の質」を向上させ、グッドサイクルを回していくために大切なアクションです。
リーダーに最も必要なこと、それは一緒に働く人たちに幸せになってほしいという気持ち――「愛」だと私は書きました。
ここでもうひとつ加えさせていただきます。
それは一緒に働く仲間への「敬意」です。一人ひとりが人生の主人公として尊重されるべき存在なんだという気持ち――それが敬意です。
幸せな職場をつくるリーダーが持つべきは、
「愛」と「敬意」
なのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
役職の違いは、役割の違いにすぎません。「愛」と「敬意」を持って、すべての人と「横の関係」を築いていきたいですね。ひとり一人が人生の主人公なのですから――。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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イチロー選手の言葉は、アドラーの提唱する「共同体感覚を高める3条件」に通じている
以前、当ブログでは、アドラーの提唱する「共同体感覚」について触れました。
アドラーは、
「人が幸せだと感じるときは、次の3つを満たしているときだ」
と言いました。
その条件とは、
①自分が好き(自己受容)
②人は信頼できる(他者信頼)
③私は貢献できる(他者貢献)
です。
この3つの条件を満たすほど人間の幸福度は増すのだ――。
と、アドラーは定義したわけです。
そしてアドラーは、この3条件が満たされている状態を「共同体感覚」が持てている状態と言いました。
さて、そんな中、「第22回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式においてイチロー選手が語った言葉が、ネットニュースの記事になっていました。
<イチロー選手の元記事はコチラです>
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2017/12/24/kiji/20171223s00001007312000c.html
イチロー選手は、子供たちから
「大切にしている言葉やプレーは何ですか?」
と聞かれ、次のように答えたのです。
「うまくいっていないチームはミーティングで
“自分に自信を持って、チームメートを信頼して、やるべきことをやる”
ということを言う。
この3つをできている人はほとんどいません。
頑張っていないと、自分に自信は持てない。
頑張っているチームメートを見ないと信頼できない。
やるべきことを分かっている人は、ほとんどいません。
みんなには自信を持てる自分、チームメートから信頼される人、やるべきことが自分で見つかる人であってほしいと思います」
表現こそ違いますが、
イチロー選手のコメントと、
アドラーの「共同体感覚を高める3条件」は、
自分に自信を持つ=①自分が好き(自己受容)
チームメートを信頼する=②人は信頼できる(他者信頼)
やるべきことをやる=③私は貢献できる(他者貢献)
という感覚を高めるために行動する、
そうすれば
チームがうまくいく=共同体感覚が高まる
というように、
見事に合致していませんか?
イチロー選手の深い言葉……。
思わずみなさんにお伝えしてくて投稿しました。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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“デキる上司”ほど部下にダメ出しをするのはなぜか?
なぜ上司は部下にダメ出しをしてしまうのか? ダメ出しをせずに部下と良い関係を築くにはどうすれば良いのか? 今回も『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で解説します。
~以下、本文より抜粋です。~
あえて苦手なことやダメなところを
積極的に見せるぐらいのほうが良い
上司には「部下から一目置かれたい」「さすがリーダーと思ってもらいたい」という気持ちが少なからずあります。
特にリーダーになりたての新米上司ほど、その気持ちが強いでしょう。ほとんどのリーダーが、プレイングマネージャーからのスタートになりますから、プレイヤーとしても部下に負けられないという気持ちが、それを助長させます。
その結果、〝デキる上司〞を見せつけたくなることがあります。本人に自覚はないのかもしれませんが、この「見せつけたい」という気持ちが、部下にダメ出しをする要因の一つになっている気がします。
自分自身を振り返ってみても、鬼上司時代の私は、無意識のうちにダメ出しをすることで自分の力を誇示していたのかもしれません。
一方、部下の視点から見れば、仕事がデキる上司であればあるほど、完璧な上司であればあるほど、部下として身構え、萎縮してしまうもの。事あるごとにダメ出しをする上司であれば、なおさらです。
仕事が本当にデキない上司では困ってしまいますが、上司は部下に親近感や安心感を与えるためにも、あえて苦手なことやダメなところを積極的に見せるぐらいのほうが良いのです。部下は、上司の自虐ネタは大歓迎なのです。
「自己研鑽しなさい」と言うよりも、
楽しく自己研鑽している姿を見せる方が良い
私は、よく自分のプライベートの話をします。特に一緒に暮らしているフレンチブルドッグの写真を見せながら、犬の話をします。部内では、すっかり犬好きキャラになっています。また、甘いものがどうしてもやめられない、ポテチがとまらないといったイケてない話もします。
一方で、朝4時に起きて、ジムで走ったり、本を何冊も読んだり、週末はコーチングを学びにスクーリングしていること、プロコーチや研修講師として活動していることなども話します。
部長になっても学び続けている姿勢や好きなことに夢中になっている姿をあえて見せるようにしています。
「自己研鑽しなさい」と言うよりも、楽しく自己研鑽している姿を見せる方が、部下にはちゃんと伝わります。「小林さんのようにイキイキと自分の好きなことに打ち込んで、周りの人に貢献できるように自分もなりたいです」と言ってくれる部下もいます。
経営コンサルタントであり、ビジネス書作家である小倉広さんは『上司は部下より先にパンツを脱げ! リクルートで学び、ベンチャーで試し、社長となって確立した99の仕事術』という本を出されていますが、まさにおっしゃるとおりです。まずは上司から恥ずかしがらずに〝パンツ〞を脱ぐべきです。
上司が個人的なことや失敗談を普段から話していると、部下も自己開示しやすくなります。このような流れで自己開示をしながら相互理解を深めていくことで、部下の上司に対する信頼が構築されていきます。
~以上、本文からの抜粋です。~
〝デキる上司〞としての自分を見せつけたくなる――これが、結果として部下へのダメ出しにつながっていきます。
自分が「学び、挑戦し、成長しようとする姿勢」を見せることで、周りの人は感動し、共感し、応援してくれるのだと思います。
それは、上司―部下の関係にとどまらず、すべての人間関係にあてはまる気がしますね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
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日頃から「Why?」の部分を大事にして想いを伝える
『職場を幸せにするメガネ』の著者である小林さんは、信頼関係を構築するために、上司は日頃から「Why?」を伝えることが重要だと言います。今回も本文から抜粋する形で解説していきます。
~以下、本文より抜粋です。~
『感動』という言葉はあっても『理動』という言葉はない
「売上目標を達成しよう」
「お客様第一を徹底しよう」
「もっと自分で考えて行動しよう」
「日々成長しよう」
これらは、ほとんどの企業で言われていることだと思います。
この後に決まって続く上司の言葉があります。
「いくら言っても伝わらない」
「何回言っても部下が変わらない」
一つひとつ上司が発信していることは、どれも正論です。しかし、正しいからといって動かないのが人間です。
よく「人は理屈で動くのではなく感情で動くのだ。『感動』という言葉はあっても『理動』という言葉はない」と言われます。
そこがマネジメントの難しさでもあります。仕事ができるビジネスパーソンほど、ロジカルで正論を主張することが多いものです。
優秀であれば優秀であるほど陥りやすい、マネジメントの罠と言ってもいいでしょう。
では、どうすればよいのでしょうか?
それは「Why?」を伝えるということです。
なぜ売上目標を達成するのか、そのことが自分たちにとってどんな意味があるのか、そのことを伝えたいのです。
その「Why?」に共感するからこそ、部下が動くのです。
例えば、私たち経理部は、経営陣に毎月の業績結果を報告する機会があります。経営陣との真剣勝負の場でもあります。
ですから、その資料を作成するにあたっては、自分たちのミッションである「数知を探求し、すべての関わりある人を最高の結果に導く」を体現する場であること、そこでどれだけの価値を提供できるかがプロとしてのこだわりであり(行動指針:プロのこだわりを持とう!)、どこまで進化できるか、高みを目指し続けよう(行動指針:頂点を目指せ!)というメッセージを部下に伝えます。
聞いている部下たちの顔も真剣な表情に変わっていきます。そして、部下一人ひとりの表情から「やってやる!」という決意のような力強さが伝わってきます。
このように「Why?」を語ることで、部下のプロ魂にスイッチを入れていくのです。
表面的な正論を一方的に伝える上司なのか、常に「Why?」を本質的に考え、伝えてくれる上司なのか、どちらが部下から信頼される上司でしょうか?
言うまでもありませんよね。
上司である私たちは、常日頃から「Why?」をとことん考え、想いを込めて発信していく必要があるのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
「人は理屈で動くのではなく感情で動く」――だからこそ、上司は「Why?」を語り、部下の皆さんに共感してもらうことが重要なのですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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相手の立場に立って考えるためのポイント
前回の投稿
の続き。今回は「相手の立場に立って考えるためのポイント」です。
では、相手の立場になって考えるには、いったいどうすればいいのでしょうか?
『職場を幸せにするメガネ』の本文から抜粋する形で、ポイントをお伝えします。
~以下、本文より抜粋です。~
《①今、部下はどんな状況・心理状態なのか?~相手のNow を想像する~》
例えば経理部であれば、決算の真っ只中で猫の手も借りたいぐらい忙しい状況なのか、決算の大詰めを迎えている状況なのか、決算が終わってひと息ついている状況なのか、状況によって部下の状態や関心も違います。
そこでまずは、部下が今どういう状況にいるのかを踏まえた上で、心理状態を想像してみます。「忙しくてさすがに疲れてきたな」なのか、それとも「忙しいけれど終わりが見えてきたぞ」なのか……全体が発している空気、そして一人ひとりが発している空気を、表情や行動などから感じ取ってみるのです。
《②メッセージを聞いた部下にどう感じてほしいか?~相手のAfter を想像する~》
次に、自分が部下にメッセージを伝えた結果、部下にどんな気持ちになってほしいのかを考えます。
「経理部のプライドにかけてもやり抜くんだ」
「上司も応援してくれているし、あともう少し頑張ろう」
「頑張った自分を褒めてあげよう」
など、なってほしい気持ちはいろいろあると思います。
どんな気持ちになれば、部下の幸福度は増すのでしょうか?
メッセージは、一緒に働く大切な仲間へ贈るプレゼントです。
《③Now/After をもとにメッセージを考える》
例えば、こんなふうに考えます。
【Now】
「忙しくてさすがに疲れてきたな」という気持ち
↓でも、あなたが「○○○○○○○○」とメッセージを伝えたことで……
【After】
「経理部のプライドにかけてもやり抜くんだ」という気持ちに変化
あなたが「○○○○○○○○」の中でどんなメッセージを伝えたから、部下の気持ちは変わったのでしょうか?
「君たちにしかできない仕事だから、もうひと踏ん張りしてほしい」
「応援メンバーを呼び、僕も手伝うから、みんなで乗り切ろう」
「終わったらうまいビールを飲みに行こう!」
「必ずできるよ!」……
どんなメッセージかはわかりませんが、あなたのメッセージが部下の幸福度を上げたのなら、そのコミュニケーションは成功です。
メッセージの内容に唯一の〝正解〞など存在しません。相手の状況や心理状態により、常に変化します。
また、全体へメッセージを発信する場合は、単一のメッセージだけでは足りません。例えば「まだまだやれるぞ」という部下と「もうさすがに疲れたよ」という部下が同時にいる状況で発信する場合は、それぞれの心に届く内容を考える必要があります。
リーダーは、コミュニケーションを通して、より良いAfter を部下にもたらす専門家です。瞬間、瞬間で何がベストかを求められ、これでいいというゴールもありません。だからこそ、マネジメントは奥深く、やりがいがあり、面白いのです。
《④伝える前に想像してみる》
実際に部下に伝える前には、自分の中で部下になったつもりで、上司から言われたらどう感じるかシミュレーションしてみるといいでしょう。「冒頭で感謝の気持ちを伝えられると嬉しいな」あるいは「この表現だと責められている気になるな」など、事前に相手の立場になって想像することでメッセージの内容や表現を調整できるからです。
「メッセージは、一緒に働く大切な仲間へ贈るプレゼント」と書きましたが、自分が気に入っているものを贈って(自分の伝えたいことを伝えて)、相手が喜んでくれなかった(幸福度が下がった)のでは、プレゼントの意味がありません。大切な仲間だからこそ、何をプレゼントしたら喜ぶか相手の立場に立って十分考え、想像し、届けたいのです。
~以上、本文からの抜粋です。~
いかがだったでしょうか?
メッセージの内容に唯一の〝正解〞など存在しません。あなたのメッセージが誰かの幸福度を上げたのなら、そのコミュニケーションは成功なのです。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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上司から部下への自己開示――どの機会に、何を話すと良いのか?
『職場を幸せにするメガネ』の著者である小林さんは、「幸せ職場」をつくる上で、重要なステップは次の4つであると考えています。
ステップ3「お互いを知り、信頼関係を構築する」の段階では、聞き方とともに伝え方も重要です。
今回は伝え方の1つである「自己開示」について見ていきましょう。
~以下、本文より抜粋です。~
相手を理解して、初めて理解される
上司が部下に関心を持つのと同時に、上司自身が部下に自己開示していくことも必要です。
ただし、ここで心に留めておきたいのは、上司が部下に関心を持つことが先だということです。上司が部下に関心を示さず、一方的に自分のことを話しても、部下はほとんど話を聞かないでしょう。アドラー心理学の影響を受けたとされるスティーブン・R・コヴィー氏のロングセラー『7つの習慣』の第5の習慣にも「理解してから理解される」とあります。相手に理解してもらいたいと思うなら、まず自分が相手を理解しようとすることから始める――これがコミュニケーションの原理原則なのです。
上司の自己開示は、「どの機会に、何を話すのか」が重要なポイントです。
まずは、どの機会に話すのか、タイミングについてです。
最も避けたいのは、部下との1対1の時間に、上司が自分のことを話し続けてしまうことです。部下との貴重な1対1の時間は、可能な限り部下の話を聞く時間にすべきです。
部下の話そっちのけで上司がずっと自分のことを話し続けると、部下は
(自分中心な人だなあ……。日頃は部下の幸せが大切とか何とか言っているけど、そんなのは結局ポーズでしかないんだな……)
という気持ちになります。
言行一致は、上司に求められる、とても大切な要素です。
では、どのようなタイミングが適しているのでしょうか?
それには、やはり全員がそろう朝礼や部会などの場がいいでしょう。上司が自分の考えを伝えるべきときにはしっかりと伝える、部下の話を聞く時間には集中して聞く。この2つを切り分けたほうがいいからです。
相手の立場に立って自己開示する
次に、何を話すのか、内容についてです。
小さい頃から学校でさんざん言われた、
「相手の立場になって考えなさい」
という言葉。
上司となった今こそ、これを実践するときなのです。
「部下は今、何に興味関心があり、上司である私がどんなメッセージを発信することが彼らにとって効果があるのだろうか」
と、あくまでも「受け手」にとって意味のあることを発信したいのです。
イラスト 森田さやかさん
私には、鬼上司時代の苦い経験があります。自分が良かれと思っていることでも、必ずしも部下が同じように受け止めるとは限らないと痛感しています。
当時の自分は、誰もが自分と同じように、「仕事がデキるようになりたい」「成長したい」と思っていると信じて疑いませんでした。そのため、部下へのメッセージは、「仕事がデキるようになるために何が必要か?」「成長するために何が必要か?」という、自分にとって意味があることに偏っていたのです。
全体ミーティングで毎回のように同じ話をされ、1対1の個別面談でも同じようなことを言われ、さらにダメ出しまでされるのですから、当時の部下はうんざりしていたと思います。にもかかわらず、何度伝えても変化が見えない、反応がない部下に、私は内心イライラしていたのです。そして、「何回言ったらわかるんだ!」「いい加減にしろ!」と心の中で叫んでいました。
「何回言ったらわかるんだ!」――この言葉が出たら危険信号です。
上司がかけているメガネを、部下に一方的に押しつけている可能性があります。
~以上、本文からの抜粋です。~
いかがだったでしょうか?
「相手の立場になって考える」――シンプルですが、良い人間関係を構築するための原点となる、非常に奥の深い言葉ですね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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