企業である以上、結果や効率は当然必要。社員ひとり一人の幸せを追求して、生産性は本当にアップするのか?
著者の小林さんいわく、
「たくさんの職場リーダーと出合うなかで、必ずと言っていいほど受ける3つの質問がある」
そうです。
その3つとは、
①「企業である以上、結果や効率は当然求められる。それはアップするのか?」
②「部下の良い点ばかりに注目すると言うが、ダメ出しが必要な場合もあるのでは?」
③「部下が幸せになれるのはわかるが、それで上司は幸せになれるのか?」
です。
今回は、①について、『職場を幸せにするメガネ』の本文を抜粋しながら紹介していきます。
~以下、本文からの抜粋です。~
Q.
企業である以上、結果や効率は当然求められる。
それはアップするのか?
A.
以下のとおりです。
リーダーは最終的に成果責任を問われるわけですから、当然の疑問だと思います。
結論から言えば、「部下が幸せな状態」、アドラーが言う「共同体感覚が持てている状態」であれば、成果は間違いなく挙がります。
それは私の部署でも実証されていることです。
ここで、
「それはたまたま小林さんの職場がそうなっただけでは?」
と思われる方もいるかもしれませんね。
どうかご安心ください。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の研究でも、幸せな職場が成果に好影響を及ぼすことが証明されているからです。
これを「組織の成功循環サイクル」と言います。
【組織の成功循環サイクルとは?】
本文P121より
キム教授は、
「より大きな成果を挙げたければ、一見遠回りに思えるかもしれないが、職場の関係の質を向上させることに力を入れることが先決である」
と提唱しています。
お互いの信頼関係が増すことで、構成員の思考の質がアップし、それが行動の質、結果の質につながるというものです。
そして、結果が出ることでさらに職場の関係の質が向上し、好循環になるというわけです。この状態を「グッドサイクル」と呼ぶそうです。
このグッドサイクルが回っている状態こそ、共同体感覚が持てている状態と言えます。
一緒に働く職場の仲間が信頼できて(他者信頼)、職場に貢献しようと考えて行動し(他者貢献)、結果的に成果が挙がり、職場のみんなでそれを分かち合う。
そして、そういう職場で働けることが喜び(自己受容)になるわけです。
一方、結果を求めるがあまり、部下のできていないところばかりが目につくようになり、指示、命令、ダメ出ししてしまうとどうなるでしょうか?
職場はギスギスし始め、部下は「ダメ出しされないように、失敗をしないように」と考え行動するようになり、結果がなかなか出なくなります。
この状態を、キム教授は「バッドサイクル」と名づけました。鬼上司時代の私の職場は、まさしくバッドサイクルに陥っていたのだと思います。
【私の職場の成功循環サイクル】
組織の成功循環サイクルについて、私の経理部の事例をお話しします。
私が部長に就任した当時の経理部は、部としてのパフォーマンスがなかなか上がらない状態でした。
少なくとも経営陣を含めた周りからの評価は必ずしも高くない状態でした。
私の前任者は、焦っていたのでしょう。
この状態を打破するために、部下たちに指示、命令、ダメ出しをし続けたのです。
その結果、部の雰囲気はさらに悪化していきました。
多くの部下が上司の顔色を窺うようになっていました。
一生懸命頑張っても評価されない状態にやる気を失くしているスタッフ、体調を崩してしまったスタッフもいました。
私には、前任者の気持ちが痛いほどわかります。
鬼、冷徹人間と言われていた時代の私であれば、同じようなマネジメントをしていたに違いありません。
あるいは、それ以上に厳しいマネジメントをしていたかもしれません。
ただ、多くの部下が自信を失くし(自己受容の低下)、どんよりとした空気が漂うこの部署を何とかするのは、新しくリーダーとなった私の責任です。
そこで、部長になった私が最初に行ったことは、経理部員全員の頑張りをねぎらうことでした。
「残念ながらみんなの頑張りが結果に表れていない。少なくとも周りにはそれが伝わっていないのは、本当に悔しい。この状況を何とかしたい。みんなが頑張ってきたこと、そして結果を出せることは私がいちばんわかっている。みんなで協力して、この状況を変えていこう」
と伝えたのです。
そして、部下一人ひとりと毎月時間を取って対話を続けました。
一人ひとりがどんな想いで仕事に取り組んでいるのか、何を大切にしているのか、今までどんな気持ちで頑張ってきたのか、みんなの声に耳を傾けたのです。
ただ部下からの声を聞くだけでなく、私が何を大切にしていきたいのか、どんな部をつくっていきたいのか、事あるごとに私からのメッセージもみんなに発信し続けました。
このようにして、信頼関係を構築していったのです。
経理部のみんなの表情が明るくなっていくのにそんなに時間はかかりませんでした。
次第にみんなで協力し合うようになっていったのです。
それから3年後。
私たち経理部は、働きがいに力を入れる会社の中で、「最も働きがいのある職場ランキング」1位に輝くことができました。
ただ単に、働きやすい明るい職場になっただけでなく、社内で順位を競う目標管理ランキングにおいても毎年首位になるようなパフォーマンスを発揮するようになったのです。
もはや社内でお荷物的な扱いを受けていた面影は一切ありません。
~以上、本文からの抜粋です。~
一見、遠回りのように思える、「関係の質」からの改善。
でも、いったん「グッドサイクル」が回り出すと、思考の質、行動の質、そして結果の質が上がり、好循環が生まれてきます。
止まっている物を動かすためには、最初に大きな力が必要です。でも、いったん動き出してしまえば、大きな力は必要なくなります。それと似ているのかもしれませんね。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日も、皆様にとって良い1日でありますように。
※冒頭の写真は下記からお借りしました。いつもありがとうございます!
『職場を幸せにするメガネ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』
(小林嘉男著)
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