過去の「原因」ではなく、未来の「目的」に着目する ~目的論とは何か?~
今回は、アドラーの提唱したさまざまな概念の1つである「目的論」について、『職場を幸せにするメガネ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』の本文を抜粋しながら解説していきます。
~以下、抜粋です~
アドラー心理学の特徴のひとつである「目的論」。これはフロイトやユングの「原因論」と対照的な考え方と言えます。
<フロイトやユングの唱えた「原因論」とは?>
心理学と聞くと、フロイトやユングの名前、そして彼らの提唱したトラウマという概念を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? 簡単に説明しますと、彼らは何か問題が起こったときに、「過去の原因」に解決を求めました。
例えば、「部下に厳しく指導する先輩の下で働くAさん」がいるとします。Aさんは、先輩の厳しい指導を避けるかのように、他部署に異動していきました。
これを原因論的に捉えると、「Aさんが異動したのには何か原因があったに違いない」と考え、原因を探します。そして例えば、「先輩の指導が厳しすぎたからに違いない」という結論に到達する--これが原因論的なアプローチです。
<アドラーの唱えた「目的論」とは?>
過去の原因に解決を求めた「原因論」に対して、アドラーは「目的論」を唱えました。
人間は「過去に何らかの原因」があって、感情を生み出し、行動するわけではない。人間は「未来に成し遂げたい何らかの目的」があって、感情を生み出し、行動している。――そう考えたわけです。
先ほどの「部下に厳しく指導する先輩の下で働くAさん」の例で、再び考えてみましょう。
このケースを目的論的に考えると、確かに先輩の厳しい指導が関係はしているようだが、「Aさんには異動という手段を用いることで何か得たい目的があったに違いない」と考えます。
では、Aさんの得たい目的は何だったのでしょうか?
「先輩の厳しい指導を受け続けることで自分の力不足が明らかになることを避けたかった」
「自分がどれだけ先輩の指導に傷ついたか間接的に訴えたかった」
……といった目的があったかもしれない、となるわけです。
目的論についてのイメージを深めていただくために、あえて親子関係の例を挙げながら、さらに説明させてもらいます。
子供が自室にこもり、独りでゲームをしているとします。
このとき、「原因はゲームだ! ゲームを捨ててしまえ!」という行動を取るのが原因論的アプローチです。
では、ゲームを取り上げ、捨ててしまえば、問題は解決するのでしょうか?
おそらく解決しません。
子供は、ゲームをマンガやインターネットに替えて、部屋にこもり続けるでしょう。
一方、このときに「引きこもる目的は何なのか? そこに意識を向けてみよう」という行動を取るのが目的論的アプローチです。
「もっと自分に関心を持ってほしいから」
「学校でイヤなことがあって聞いてほしかったから」
など、子供には引きこもることによって果たしたい何らかの目的があるのです。
その目的に関心を向け、話を聞き、コミュニケーションを図るほうが、ゲームを取り上げるよりも部屋から出てくる可能性が高くなるはずです。
いかがでしょうか?
「目的論」のイメージはつかんでいただけたでしょうか?
「目的論」という言葉がやっぱりわかりにくい、と感じる人がいるかもしれませんね。
そんなときは、次の質問を心に留めておいてください。
それは相手が、
「本当はどうなりたかったのか?」
という質問です。
本当は異動したかったのではなく、力不足が明らかになることを避けたかった――。
本当はゲームをしたかったのではなく、学校でのイヤな出来事を聞いてほしかった――。
この「本当は」の部分に目を凝らし、耳を澄ますのが、「目的論」なのです。
~以上、抜粋です~
いかがでしたか?
人間は「未来に成し遂げたい何らかの目的」があって、感情を生み出し、行動している--この目的に対して本人が無自覚に行動していることもあります。
それだけに、「本当は」の部分に目を凝らし、耳を澄ますことが、リーダーとして大切なのだと感じます。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日が皆様にとって良い1日でありますように。
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